二十歳街道まっしぐら
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母と鳥の話 このエントリーを含むはてなブックマーク あとで読む

うちの母は鳥が大好きで、飼うだけでは飽き足らず、家の前にパン屑など撒いて、そこらの鳩や烏、雀の世話もしていた。

当然、鳥が集まれば五月蝿いだの糞が汚いなどの苦情が来る。
母は近所に謝り、路上の糞は清掃する事で勘弁してもらった。

翌朝、いつもの様に鳥が集まってきて、母に餌をねだっていた。

「あんた達、ここでご飯食べるならトイレはよそでしておいで。あと、ご飯の時は静かにね」

と独り言のように呟いてパン屑を撒いていた。


今から思うと、その辺りから糞の量が明らかに減っていた。
掃除の手伝いをしている時はあまり気にしてなかったが、鳴き声もほとんど出してなかった。

目に見えて糞の量が減ってきて、
鳥も騒がなくなったので、近所も首をかしげながら
母の餌やりを黙認するようになった。

「あんたらったら、食い意地はってんだから」

と母は笑いながら、相変わらず餌をやり続けた。


それから1年と少し、母は老衰から倒れてしまい、あまり長くないと診断が下った。

母は入院し、鳥に餌をやる者がいなくなっても、鳥達はいつもの時間に集まり、

30分くらいずっとそこにいた。

「もうお袋いねーから、お前らに餌やれんぞ」

といっても分かるはずもなく、やらなくなって1週間、1ヶ月経っても集まり続けた。

仕方なしに俺が時々餌を撒いても、すぐに手をつけない。
30分ほど経ち、母が出てこないと分かるとちょこちょこつまんで去っていく。

そんな状態が更に1ヶ月ほど続いた先日、母が他界した。

葬式の日の朝、今までにない位の数の鳥が、家の前の電線に密集していた。糞もたらさず、身じろぎもせず、鳴きもせず、ただずっとそこにいた。

出棺の時、カラスが数羽、高らかに鳴き上げて、それから一斉に鳥たちが飛び去っていった。

とても不思議な光景だった。母と鳥の間にどんな絆があったんだろう。




今では俺が毎朝パン屑を撒いている。相変わらず、糞をすることはない。


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